カブツー 新屋山神社 その2

富士吉田登山道の『中の茶屋』へと向かった。
懐かしい。
富士の林道がまだ未舗装路だったころ、シーズン中はしょっちゅう走りに来ていた。

再建された中の茶屋。
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再建前の中の茶屋の写真がある。
いまから20数年前にフィルムカメラで撮影したのを、画像に起こしてみた。
確か5月の連休だったと思う。
ここら辺りでキャンプして数日林道三昧が毎年の行事になっていた。
周りには同じようなテントが集まっていたので夜も平気だった。

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自転車に乗っているのは通りすがりの人で服装からして5月の陽気が分かる。
当時、中の茶屋は廃屋だった。
画像をよく見ると、石碑と石碑の間に奇妙な人のようなものが写り込んでいる。
サングラスを掛けてうずくまった姿勢で身体に毛布のようなシートをまとっているように見える。
拡大してみる。

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この写真を撮影したときは、ここに到着した直後であった。
これから荷物を降ろしてテントを張ってという、ウキウキした気分だった。
キャンプ好きなら誰でも分かる、あの高揚感でもってしばらく周辺をウロついていただろう。
だから何か類似した物体があれば当然気付いている。
ちなみにこの時のバイクは初期型の真っ赤なCRM250だった。
市販車らしく低く抑えた排気音とは裏腹な暴力的な加速が懐かしい。
キャンプを終えて帰宅し、フイルムをプリントに出して、戻ってきた写真を見てギョッとなった。
おそらく富士山で遭難死した人なのだろう。
現在のデジカメのように画像再生という器用な機能がなくて幸いだった。
夜、テントの中でこの画像を見たら恐怖のあまり荷物もそのままバイクに飛び乗り、明るい国道まで駆け下って、終夜営業のレストランにでも飛び込んで朝まで動けなかったかもしれない。

吉田口登山道はここから舗装路と未舗装路の2本の道が平行して伸びている。
オフローダーはもちろん未舗装路を選ぶ。
当時のままの道をカブで走ってみた。

16101215.jpg

この先のゲートから残念ながら舗装に変わる。
16101216.jpg

16101217.jpg

もう、ここを走ることもないだろう。
ところで、途中で焼け焦げた木が道の脇に1本だけ枯れて立っている。
以前は折れてはいなかったが。
16101218.jpg

私がこの木に出合ったのはもう10年以上前になるだろうか。
当時は生々しく焼け爛れて、地面にも広範囲に黒く焦げ跡が残っていた。
どう見ても焚き火の不始末とは思えなかった。
私はてっきり改造4駆なんかが富士の不正地を走り回った後、オイル漏れか何かでここで炎上したものだろうと思っていた。
だがこれには事情を良く知る者がいた。
会社の休憩時間に若いやつと話していて、どういう訳かこの木の話しになって、彼はこの焼け焦げた木を知っていた。
知っているも何も彼は第一発見者なのだった。
年末年始休暇に、彼はかねてより計画していた富士山の雪中キャンプを実行すべく終電で独り富士吉田駅に降り立った。
孤独に連泊する予定なので重装備である。
見た目はひょろっとした青年なのだが、凄いやつがいたものだ。
富士山目指して歩き始め、登山道に入ると前方がやけに明るい。
そこで大掛かりなキャンプでもしているのかと思ったそうだが、やがて予想外の事態が判明した。
なんとクルマが一台炎上しており、近寄ると運転席には黒焦げの死体。
真夜中の富士山中で彼はそれを目の当たりにしたのだ。
警察に通報し、突然大騒ぎの渦中に放り込まれ、事情聴取やらで彼は楽しみにしていた富士山雪中キャンプを断念せざるを得なかった。
焼身自殺ということだったらしい。
いい大人で自殺したい奴はどこなと勝手に死ねばいい(10代の痛ましい自殺とは別)と私は思う。
誰だって人生、生きていればふとそう思うこともあるはずだ。
だが、ほとんどがまっとうに生きている。
死にたきゃ勝手に死んでくれ。
ただし、他人様に絶対迷惑かけるなと言いたい。
この青年も日々まっとうに働き、計画を立て準備し、天候を祈り、ようやくこの日を迎えたというのに、それが全て台無しになってしまた。
この青年から話しを聞いたときは何たる偶然かと驚いたものだが、しばらくしてこの青年は自転車で四国を一周すると言って退職した。
いまはどうしているやら。

なんにしても、まっとうに日々の生活を送っている他人様に迷惑をかけるようなことはなしにしてもらいたいものだ。
言っても分からないだろうけど。
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