夜の8時を過ぎたら

やることがなくなった。
蚊帳のようなテントの中で横になり、スマホをいじる。
夜になってもまだ蒸し暑く寝苦しい。
使ったこともないしこれから使う予定もそのつもりもないアプリとやらを片っ端から開けてみるが、ネット環境にないのでどれも素っ気無く終わってしまう。
9時を過ぎた頃、柿の種をポリポリ齧りながら最後の一本のビールを飲んでいたら、突然LTEの目盛りが反応し始めた。
接続された。
理由は分からない。
東北旅でもこんなことがあった。
十和田湖の生出キャンプ場に泊った雨の夜に、スマホがまったく使えず淋しい夕食の後、サンバーの運転席に座るとスマホのLTEが反応し始めた。
あの時はフロントガラスを覆ったアルミ箔のブラインドが電波を集めるアンテナの役割を果たしたに違いないと思ったのだが。
たまに切れるが、なんとか記事を読んだりすることができる。
救われた気分だ。
このキャンプ場に常夜の外灯はない。
炊事棟と東屋には蛍光灯があり、近頃よくある夜9時10時になったら自働で電源が落ちるという省エネタイプではもちろんない。
炊事棟の蛍光灯を点けっ放しにし東屋のは虫が寄ってくるので消灯し、文化放送の『そこまで言うか』をラジコで聞いていたらいつのまにか眠ってしまった。

翌朝は5時半に眼が覚めた。
夜中に一度も目覚めることなく、よく眠ったなあ。
よく眠れるキャンプ場は良いキャンプ場である。

さっさとパッキングを済ませ、ゴミもネットに挟んで、さて帰りますか。
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志賀坂峠からの眺め。
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299まで下った先のコンビニで。
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サイドバックの取り付けに、いまいち難がある。
次のキャンツーまでに改善しよう。

雁坂トンネルを抜け、道の駅みとみを過ぎ、順調に距離を稼いでいたら前方の対向車線の真ん中に乗用車が一台停止しており、
その前に黒い物体があった。
何だろうと不審に思いながら近付くと、黒い物体が動き出した。
猿かと思ったがそれにしては真っ黒だ。
四つ足で歩くそいつはクマだった。
大きさは犬で例えるとラブラドールくらいか。
まだ成獣にはなっていない子グマのようだ。
と、とつぜんそいつは私の走行車線上を私に向かって突進してきた。
オイオイ、マジかよである。
カブを停車させるが、さてどうしたものか。
子グマは走って接近してくる。
四肢が躍動し、黒い背中がモッコモッコと盛り上がる。
不思議と襲われるかもしれないという恐怖感は湧かなかった。
まだ距離は充分に離れているし、道幅は広いのでいざとなればあっさりUターンは可能だ。
緊張してブレーキレバーを握り締めたまま、両目の視線を釘付けにしていると、というかさせられていると、子グマはふいに向きを転じ、私から見て左手の出っ張りのあるコンクリートブロックを積み上げた揚壁に取り付き登り始めた。
お山に戻るつもりなのだ。
だったら最初から揚壁に向かえばいいものを、何故私に向かって突進してくるというフェイントを掛けたのだろうか。
私をからかったのか?
重いであろう身体を懸命に引き上げる様子は、猫の敏捷性とは程遠い。
たまに後ろ足を踏み外したりしている。
メッシュジャケの右ポケットにはコンデジが裸で入っている。
超マイナーとはいえブログを書いているからには、ここでカメラを取り出し、画像なり動画なりを撮影するべきだったが、何故かここは速やかに立ち去るべきだとの判断が動き、カブを発進させた。
対向のクルマも動き出し、すれ違う際互いに顔を見合わせた。
年配のドライバーは笑っているように見えた。

第一印象はパッとしなかったが、今回の野栗キャンプ場は気に入った。
涼しくなったらまた行こう。
散歩がてら歩いていける距離の野栗食品の老夫婦も酒屋も今後いつまで営業できるか。
2軒が廃業したら淋しくなるだろうな。
久し振りのキャンツーは150円ボッタクられたり、子グマに突進されたり、なかなか楽しませてもらえた。
いつか野栗の酒屋へ行ったら、再度氷を頼んでみるかな。
こんどは300円だったりして(笑)。
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キャンプ場には手作り感に

溢れた東家があり、今日はどうせ誰も来ないだろうとその中にテントを張ることにした。
その前に木製の長椅子に腰掛け、ビールをたてつづけに2本飲んだが、即座に体内を駆け巡るはずのアルコールは暑さで発散されてしまうのかちっとも酔いが廻ってこない。
いつ購入したか忘れてしまったテントは、近所のホムセンで処分価格で投げ売りされていた最後の一個である。
価格は3千幾らだったか。
使用は今回初めてではない。
パッケージの写真になんとなく違和感があったのだが広げてみてその理由が分かった。
なんとこのテント、側面がメッシュだった。
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入り口にもメッシュがあるので、それを使えば3方がメッシュという、まるで蚊帳みたいなテントなのだった。
夏の暑い時期限定のテントというのもなかなか珍しいかもしれない。
もちろんテントを覆うシートは付属しているが。
さて、夕暮れがせまってきて私は愕然とすることになった。
まず、スマホのLTEが入らない。
すなわちネットに接続することができない。
つぎに携帯ラジオの乾電池を忘れた。
必然音がまったくない。
娯楽がない。
ただ独り、唖然として山の夕暮れと対峙することになった。
これはかなり厳しい状況だ。
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だが自然の音なら満ちている。
近くの竜神の滝の水音、渓流の瀬音、そして近くで合唱するヒグラシの鳴き声だ。
この狭いキャンプ場にヒグラシの声はよく似合う。
野栗食品の爺様は薪は自由に使って良いと言ったが、
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いくら焚き火好きの私でもこの暑さで焚き火は無理だ。
私が燻製になってしまう。
テントを設営したら、もうやることもない。
時間はまだ早いが夕食に取り掛かることにした。
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蒸し焼きにしているビールのつまみは野栗食品で買った宇都宮野菜餃子だ。
宇都宮肉餃子というのもあったが、野菜にした。
価格は260円。
ここまでの配送の手間まで考慮すると原価は幾らで老夫婦には幾らの収入になるのだろうか。
合間にポリポリ齧るのはピーナッツの入った柿の種。
野栗食品で購入したのはこの2点だけである。
店の爺さんはさかんに袋にパック詰めされたホルモン焼きを勧めてきたが、肉類はあまり食べなくなった。
以前はキャンプと言えば焼肉に焼き鳥、バーベキュー。
スーパーで鶏肉買って台所でネギと一緒に串刺しにし、タレもニンニク入りの自家製と凝っていたものだが。
いまはもう簡単に済むならなんでも良い。
侘しい夕食だなあと思われるかもしれないが、確かに侘しい。
だが悲壮ではない。
亡くなった作家の田中小実昌は、酒のつまみがないとき、小皿に醤油を垂らしそれに輪ゴムを漬けてそれをクチャクチャ咬んで酒の肴にすると書いていたが、私もその心境に近付いてきたのかもしれない。
ヒグラシの鳴き声もいつしか止んだ。
夜はまだこれから長い。

近辺には道の駅が上野、万場と

2ヶ所あるのだが、どれも長居したくなるようなところではなかった。

万場町はかつての宿場町だったらしいがその面影はほとんど残ってはいない。
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唯一残っていたそれらしき建物が、この木造3階建ての旅館だ。
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万場町は今回が初めてではない。
過去、御荷鉾スーパー林道を走りに来た際、ここから狭い急坂の山道を駆け上がり、町営みかぼ高原荘のテントサイトでキャンプしたことがある。
夏休み時期だったため、大人に引率された子供たちがキャンプファイヤーを囲んで、学芸会のような演目を繰り広げ、一緒になって大笑いさせてもらい、彼らが引き上げた後、手の届きそうな満天の星空に、驚くほどの流星が次々と流れた(あとで分かったことだがちょうど獅子座流星群が到来していた)。
再びそこを訪れてみたのだが、みかぼ高原荘はすでに廃業し立ち入り禁止になっていた。
年月が過ぎ去ると残るのは思い出だけである。
来た山道を下って万場町に降り、一軒営業していた食堂で遅い昼食を摂った。
暑さは体力と、さらに気力までを奪う。
もはやこれまで。
予定を切り上げ、第一印象があまり良くなかった野栗キャンプ場に向かった。
受付は老夫婦が営む野栗食品だ。
料金500円を払う。
店のお婆ちゃんは夕方になれば涼しくなると言っていたが。
少し離れたところには酒屋もある。
カーテンが閉まっていたのでここからいちばん近い酒屋はどこかと聞いたら、店の人がいま帰ってきたから店を開けるよとお婆ちゃん。
すぐそこなのだがカブで行ってみるとカーテンが除かれ扉が開いていた。
店番はオバちゃんだ。
冷蔵ケースの中には見たところビールはスーパードライが1パックとバラで数本あるのみ。
発泡酒はないの?と訊くと「え、あったけなあ」
扉を開けて中に手を入れ、あったあった。
のどごし生が1パック出てきた。
ビールの在庫はそれだけ。
ほとんど商売としては成り立たないだろうと思うが。
パックから1本取り外そうとするので「あ、それ全部」というと「え、ぜんぶ買ってくれるの」と嬉しそうである。
「じゃあ、1本150円で(と電卓をたたいて)900円」
近所のクリエイトがいかに安いかよく分かった。
缶ビールがちょうど6本入るクーラーバックはあるが、この暑さではいつまで持つか。
氷はないの?と訊くと「氷?うーん、あるにはあるけど」と微妙な返事。
自分で飲むためにペットボトルに水道の水を入れて凍らせたのならあるという。
「それでいいですけど」と言うと、「じゃあ、ビール6本買ってくれたから特別サービスで150円」
オバちゃんはここぞとばかりに妙に明るいノリでボッタクってくるのであった。
サービスなら只だろうフツーとか思いながらも、私も負けじとボッタクリに協力する。
「ああ、それでいいです。溶けたら飲めるし(飲む気ないけど)。お願いします」
冷えたビールのためなら安いものである。
オバちゃんは私からあらたに150円受け取ると、それをテーブルの上に放置したまま狭い通りを挟んだ倉庫のような建物へ入って行き、もとは何が入っていたのか飲料のペットボトルを持って戻ってきた。
めでたく交渉成立し、私はビール6本と、ともかく氷を手に入れ、キャンプ場へと戻った。

秩父方面には格安の

キャンプ場はないと諦めていた。
あるのはファミキャンを当てにした一区画の料金が4000円から5000円のキャンプ場ばかりだと。
今回、カブでの原点回帰ツーを実践するにつき、あらためて格安キャンプ場を検索してみると、ありました。
バイクでの利用料金500円。
無料同然のキャンプ場が。
その名は野栗キャンプ場。
群馬に入ってしまうがなかなか良さげな所である。
それと7月頭から11月の末まで雁坂トンネルの通行料が無料になるとの情報をブログから得た。
軽自動車は確か580円だったか。
原付はもともと70円なので無料になったからと言ってさして影響はないが、バイクの場合、料金所で小銭を払うのはけっこう面倒なのでその手間が省けるのは歓迎すべきことだ。

キャンプ道具一式を積載したカブ。
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この後姿を眺めているだけで、なんだか年甲斐もなくニヤニヤしてくる。
気分が高揚してくる。
それが自分でも意外だった。
やはり根っから好きなんだな。
この気持ち、分かる人には分かってもらえると思うが、分からない人にはどんだけ説明しても分かってもらえることはないだろう。
ツーリングネットとテンションコードはかれこれ20年くらい前の林道キャンツー時に使っていたものを押入れから出してきた。
まだ立派に使える。
近所のホムセンで買った前カゴ用のネットは2年くらいでだらしなく伸び切ってしまったが。

無料になった雁坂トンネル。
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その手前の広瀬ダムでの気温は27℃。
メッシュジャケでは肌寒かったので道の駅みとみで前カゴに入れておいたウィンドブレーカーを着込んだ。
そして雁坂トンネル入り口附近の気温は22℃。
トンネル内はさらに低いと思われるので無防備に突入したら長いトンネルを抜け出る頃には凍えてしまうだろう。

途中、栃本の集落に寄ってみた。
今回2度目の訪問か。
以前は旅籠だったのか、旧道に面して古い家屋が二棟。
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関所跡。
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栃本集落。
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昔は秘境のような集落だったのだろう。
雁坂トンネルが開通するまでは似たような状況だったのではなかろうか。

途中、休憩を入れながら野栗キャンプ場に到着したのは正午前だったか。
早朝5時半に出発して約6時間強。
この地の気温は33℃。
暑い。
渓流沿いのキャンプ場は、精進湖のように見渡す限りのキャンプ場に馴染んできた身には利用を躊躇うような閉塞感があった。
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計画では、ここをベースにして昭和で時間が止まった街下仁田を訪れる予定でいたが何しろ暑い。
とてもそんな元気はないので、とりあえず周辺を走ってみる。

万場町へ向かう途中でカブに給油した。
3.1リッターで460円。
燃費を計算すると68キロ。
この数字はちょっとおかしい気がする。
走り過ぎだ。
リアに重い荷物を積んでいるし、ここへ至るまで雁坂峠と志賀坂峠を越えてきている。
どちらも半端ない峠である。
2速3速を多用してきた。
給油もセンタースタンドを立てて、満タン位置よりも多めに入ってる。
それでリッター68キロか。
出掛けに距離計の数字はメモってきたので間違いはないのだが。

専用ガスが必要な

ガスバーナーとランタンをヤフオクでセットで処分してしまったので、代わりにこれを買った。
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イワタニのカセットフー エコジュニア。
カセットガスならコンビにでも購入できる。
もっと小さくなる組み立て式なら色々あるのだが、私なら間違いなく使用中に不注意から、うっかり引っくり返してしまうことだろう。
ちょっとかさ張るが、これなら安定しているし、徒歩や自転車ではなくカブに積載するので、充分コンパクトである。
さっそくカブツーに持って行くことにする。

思うところあって3年間使い慣れた

カブのリアボックスのベースキットを取り外した。
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再度取り付けるとき混乱しないようナンバーを振っておいた。
このままでもいいかと思ったが、やはりキャンプ荷物を積載するには邪魔になるからしょうがない。
金具を金鋸で切断したり、位地合わせに苦労したのだが。

自分なりに若い頃、オフロードバイクにキャンプ道具を積んで林道ツーをしていた時期を第一ステージと分類するなら、サンバーにカブを積んで車中泊していた頃を第二ステージとし、カブにキャンプ道具を積んでのツーリングは第三ステージの新たな幕開けとでも言おうか。
原点回帰である。
ま、そんな大げさなものではないが。
カブでのキャンツーは今回初だ。
さて、どうなることやら。
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