この日は風もほとんどなく、

物音といえば、私が移動する度に足下で踏み潰される落ち葉と、時に枯れ枝を踏み折る乾いた騒音だけである。
かつては5,6軒の家屋があったらしいが、現存するのは2軒の家屋と掘っ立て小屋がひとつあるだけ。
もう一軒の家屋は薄暗い林の中にあった。

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荒れ果てた内部。
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離れた所にある掘っ立て小屋。
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私は小心者なので、静寂に包まれた廃集落の敷地内にポツンと独り立っていると、突然野生動物に襲われないかとか、世間を追われた不審者が潜んでいて、私が現れたことで金品目当ての強盗に変身するのではないかとか、この世のものではないものが廃屋の奥から姿を具現化させるのではないか、あるいは林の中からじっと見ているのではないかとか、余計なことばかり考えてしまって、まあ正直なところ内心ビクビクものなのだが。
もともとは日本の伝統家屋と、それが多く残る旧街道の佇まいが好きなだけで、とくに廃村や廃墟マニアというわけではなく、それにこだわるつもりもないが、ついついこうした山奥の集落に惹かれるのは、たんなる怖いもの見たさという人間の性だけではなさそうだ。
こんな不便な山奥でも、かつては人々の暮らしがあり日々の営みがあったという事実が、こうしてその場に身を置いてみると実に感慨深く伝わってくる。
かといって利便性にどっぷり浸かった現在の暮らしぶりを反省したり、少しでも戒めようという気にならないところは、私の凡人たるゆえんか。

集落跡地の真ん中には、クルマが一台通れる幅の砂利敷きの林道が降りてきていて、そちらへ行けば舗装された赤石高下線へ容易に抜けていると思えたのだが、コーナーをひとつ曲がった先で道はすでに崩れて廃道近く荒れていた。
ガックリと気落ちして来た道を戻った。
今度はひたすら下りなので、少しは楽だったが。

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舗装路まで戻ってきてホッと一息の図。
気が付くと汗びっしょりになっていて、ジャケットとインナーまで脱いでしばし涼む。
何とか無事に帰ってこれたと思ったら何故か笑いがこみ上げてきた。

今回の平清水集落は、あと何年か先には徒歩でしか到達できない地点となり、やがて地図上からも記載が消え、人々が暮らしてきた歴史ある集落はもとの自然へと還っていくことだろう。
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良好な路面はすぐに終わった。

林道は放置されて久しいのか、進むに連れて路面はガレてきた。

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とっかかりですでにこの状態である。
落ち葉の絨毯に覆われ、これでは路面の状態は把握できない。
小さな橋を渡ると、車一台分程度の幅でガードレールもない林道は、いよいよ登り勾配となった。
渓流は次第に細くなり、山と山の間が狭まり、日差しは木々に遮られ、真昼間だというのにヘッドライトの光がぼんやりと路面に投影されるまで周囲は暗くなった。
角の尖った落石が散乱し、流水が削ったクレパスもあるようだが、すべては落ち葉に覆い隠され、まるで地雷原に踏み込んでしまったようで、泣きたくなってきた。
いまさら引き返すのも面倒なので、とにかく進む。
ギアは一速にいれたまま。
右足はリアブレーキペダルの上にキープ。
左足は常時ステップから離し、パタパタと足を着きながら登っていく。
少しでも速度が出ていた場合、前輪が落ち葉の下に隠された石に乗り上げ、不安定な石が衝撃でごろんと転がり、ハンドルを取られてバランスを崩し、渓流側に向かって弾かれたら、あとはもう転落は必至である。
来たことを半ば後悔しながら、慎重に亀のように進むしかない。
途中、山肌に沿って、細く急な上りの分岐道があって、ピンと来るものがあったが、その道へは出来れば登りたくないので、そうならないよう願いつつ直進したが、結局私の感は正しかった。
林道は程なく赤石温泉の前に架かる橋の所に出て終わった。
ここは前回、舗装された林道赤石高下線を走ってここまできたことがある。
時間の都合でここで引き返したのだが、その時、側に林道らしき道があるなと、記憶の端に留めておいた。
これで線が繫がったのだが、いよいよあの上り坂に挑戦しなければならない破目になった。
覚悟を決めて薄暗い林道に戻った。
難題に思えた急坂は、それなりに苦労はしたものの距離は短く、意外とあっけなく陽の当たるかつては畑地だったと思われる広場に出た。
これでようやく平清水集落の跡地に辿り着いたわけだ。

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最初に目にする建物。

その内部。
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ヘルメットの傍らに、意外にもスケート靴があった。
冬場、精進湖の湖面にはスケートリンクが開設されていたこともあったらしい。
とすると、ここから精進湖までスケートに?
交通機関はバスだろうか?
最寄のバス停は何処?
当時はちょっとした小旅行気分だったのか?
風呂もタイル張りだし、山の中とはいえ、そこそこ余裕のある暮らしだったのだろうか。
色々と疑問と想像が膨らむ。

ここのところ、しばらく好天がつづき、

空気も乾燥している。
この土日も晴天に恵まれた。
足の怪我が治って、3週間ぶりにようやく靴が履けるようになったので、冬が来る前のこの機会を逃がしてなるものかと、生き返ったように出かけた。

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本栖湖の紅葉と湖面の逆さ富士。

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秋晴れに映える富士山。
いつもは見飽きて素通りする展望所も、この日は格別な景色だったのでカブを停めた。

道路工事で舗装の表面が削り取られ、細いたて溝が続く区間で、先ほど私を豪快に抜いていった大型バイク2台の背中が見えてきた。
どうやらハンドルを取られる怖さからスピードを極端に落としたようだ。
私のカブは工事区間に突入しても何ら影響もなく同じペースを保ったまま進む。
このままじゃ追い越してしまうなあ、などと思っていたら工事区間が終了して、大型のライダーはヤッベ、カブが追い付いてきたと思ったかどうか知らないが、一気に加速してあっという間に消えていった。

今回の目的地はここ。
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増穂町の戸川渓谷だ。
ここ戸川レジャーセンターは営業しているのかいないのか、外に人がいない。
山の中で缶飲料の自販機が設置してあるのが有難いが。

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渓谷の紅葉。
美しさが狙い通りに伝わらないのは、決してカメラの所為ではない。

ところで木々の紅葉は、その仕組みは解明されているが、それでいくと必ずしも赤く色づく必然性はないらしい。
昔、何かの本で読んだ記憶がある。
不思議なことである。
それを見物するために大渋滞が発生する日本人の国民性も、海外から見れば不思議であるらしい。

さて、戸川レジャーセンター前を直進すると、やがて舗装が途切れてダートに変わる。
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ここから先、極悪路が待ち受けていることを、この時点の私はまだ知らない。

その昔、煙草は煙草屋さんで、

酒は酒屋さんでしか購入はできなかった。
いまでは何処にでもあるコンビニで、気楽に24時間買えるけどね。

小さな集落の、かつてのメインストリートで

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そんな昔の煙草屋さんに出会った。

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小窓の向こうに座っていたのは、暇なお婆ちゃんか、はたまたこの店の看板娘だったか。
今は自動販売機がひとつあるだけだ。

なかばダート化した路面と荒れた舗装が交互に現れる細い林道を、行けるとこまで行ってみようとカブを走らせた。
異様な臭いが漂ってきた。
ゴミの集積場で嗅ぐような饐えた臭気だ。
まさかこんな山奥に〇廃処分場があるとは。
林道のどんづまりで驚きの光景に出くわした。
腐敗臭とともに違法のにおいもプンプンする。
カメラを向けているところを見つかったら、怖いおっさんが飛び出してきそうで画像はない。
それでもカブを隠すように停めて、周囲の建物だけはしっかり撮影してきた。

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お寺さんである。
この地に寺があるということは、かつてはそれなりに人口のある集落があったのだろう。

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できればもっと深く探索してみたかったが、何せヤバそうな雰囲気を背中にひしひしと感じたので、心残りだが逃げ帰った次第。
地元の人に聞いたところ、臭いし狭い道をトラックが走ってくるしで、あそこは地元の人間も近付かないということだった。
道はまだ先まで延びていて、どこそこに通じているということなのだが。
その『どこそこ』に私はぜひ行ってみたいのである。

だが、もう冬が来るなあ。
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Author:sichirin
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